水瓶に雨粒

好きなことを、好きなだけ。水が溢れるように。

【恋と深空二次創作】マヒルの吐息はいやらしい #マヒル

※ 注意 ※
こちらは『恋と深空』二次創作となっております。
間違いで来られた方は即回れ右でお願いします!

《登場人物》
主人公、マヒル

▼概要
マヒニキの付き添い(運動)の息遣いがエロいな…と、そんなとこから唐突に生まれたSS。
数万回擦られてるネタです。無理くりバレンタインをトッピングしてみた。

▼備考
バレンタイン/高校生設定 ※マヒル航空アカデミー入学前



「──ぅ……、はぁ、……ふっ」

 マヒルの部屋のドアをノックしようとした矢先、そんな声が漏れ聞こえてきて私は思わず動きを止めた。
 まるでレイのEvolにでも掛かったかのように、今にもドアを叩きそうになっていた手がピタリと凍りつく。

(え……?)

 思わず息を殺して耳をそばだてると、なおも断続的に聞こえてくる妖しい息遣いに、私のピュアな心臓はドキドキと音を立てた。

「ふん──、っ……く、……はぁ……」

 え、待って、私、ここにいたらダメなやつでは……?

 ひとつ屋根の下で暮らす血の繋がらない兄に用があって来たのだけれど、ここは聞かなかったふりをして今すぐ「回れ右」するべきだろう。
 けれどどうしたことか、足が動かない。

 マヒルだって多感なお年頃だ、好きな子を想像してすることもあるだろう。ましてやここは彼の自室なのだから、もちろん彼に落ち度はない。ただ、タイミングが悪かったのだ。

 苦しげにくぐもった声が私の初心な耳を脅かすたび、いけないと思うのに、見たことのないマヒルの表情が脳裏に浮かんでは消えていく。

 懸命に何かに耐えるように、凛々しい柳眉を顰めて息を詰めるマヒル
 頬を紅潮させ、堪らず吐息を漏らすマヒル
 彼を一定のリズムで苛み、徐々に頂点へ追い詰めるのは、自身の手──

 妄想に耽っているそのとき、不意に目の前のドアがカチャリと開き、私はハッと息を呑んだ。
 弾かれるように顔を上げると、同じく驚いたようにこちらを見下ろしているマヒルと目が合う。

「うわ、びっくりしたぁ」
「……っ」
「ん、どうした? 顔が赤いぞ?」
「な、何でもない……」

 マヒルの表情は私が想像していたものと当たらずとも遠からず、まだ息の整っていない様子で胸を上下させ、こめかみに小さな汗が玉を結んでいる。
 はあ…と気怠げな吐息を漏らしながら、動揺を見せる私の顔色を窺うように、紫水晶の瞳がまっすぐ覗き込んでくる。

 良からぬ妄想を膨らませていたせいでいたたまれない気分になり、反射的にプイと目を逸らしてしまう。
 気まずくて、たまたま通りかがったところに鉢合わせた風を装ってリビングへ向かおうする私に、マヒルの声が追い掛けてくる。

「え、おい、オレに何か用だったんじゃないのか?」
「……」

 誤魔化しきれず、私は廊下を引き返してマヒルの元へ舞い戻り、手にしていた可愛い包みを黙ってその胸に押し付けた。大きな手が私の手を包み込んでから、それを受け取る。

「これは?」
「友達が兄さんに渡してくれって」
「なんだ、お前からじゃないのか」

 マヒルはこれ見よがしに残念そうに肩を竦めた。中身が何かはもう判っているようだ。
 きっと、今年もたくさんプレゼントをもらって来たに違いない。

「お前からはないのか?」
「ないよ、毎年食べきれないほどの量をもらってくる人にあげたって意味ないでしょ。私は兄さんが食べきれないものを横から掻っ攫って処理してあげる専門なので」

「そうか、じゃあ、これはお前が責任を持って処理してくれ──オレからお前に、ハッピーバレンタイン」

 そう言って手渡されたのは、手書きのいびつなりんごの絵が描かれたシンプルな箱。市販の包装紙材であることが明らかに見て取れるそれは──

「まさか、手作り? 将来はりんご印を冠したショコラティエを目指してるわけじゃないよね?」
「お前が望むなら、そういう道もいいな」

 マヒルは穏やかに微笑んだ。
 すでに航空アカデミーへの入学が決まっていることを私が知っていると認識しながら、そんなことを嘯く。

「今ちょうどトレーニングが終わって一息入れようとしてたところなんだ。どうだ、リビングでカフェオレでも飲みながら一緒に食べないか」
「え──トレーニング……?」

 問い掛けに対して返事をしない私に、マヒルは不思議そうに首を傾げている。
 不意に視線を横へ彷徨わせると、ドアの隙間から部屋に敷かれているトレーニングマットが目に入った。
 それは文字通り、彼が自室でトレーニングをするときにだけ広げられるものだ。

「あ、いつものプランクやってたんだ……? なんだ、そっか……」

 なぜか私はほっと胸を撫で下ろした。
 ドギマギと動揺する私の様子を見て怪訝そうな表情をしていたマヒルは、やがて何かに思い当たったように声を上げる。

「──あ! お前、なんか変な想像してたんじゃないだろうな?」
「へ、変な妄想なんてしてないよ! 言い掛かりはやめてよね!」
「こら、逃げるな──」

 ぴゅっと持ち前の運動神経で私はその場を離れた。すでに就寝したおばあちゃんを起こさないよう、できるだけ音は立てずに。
 けれど、この後コンパスの差であっさりと捕まった私が、何やらニヤニヤと意地悪な笑みを浮かべたマヒルに何を誤解していたか白状させられるまで、5分と持たないのだった。

ヒルの吐息はいやらしい